アシュワガンダ × レボチロキシン(商品名: チラーヂンS)等の甲状腺ホルモン薬 注意(ヒトデータあり)
要約
アシュワガンダには、甲状腺ホルモン(体の代謝を調節するホルモン)の値を上げる方向のヒトデータがあります。甲状腺の働きが少し低下した人50人を対象にした試験では、根エキス600mgを1日量として8週間続けたところ、甲状腺ホルモンであるT3とT4が上がり、TSH(甲状腺を刺激するホルモン)が下がりました。もともとホルモンが多めの人や、レボチロキシンでホルモンを補っている人では、この重なりでホルモンが過剰になるおそれがあります。実際に、使用後に甲状腺中毒症(ホルモンが過剰な状態で、動悸(どきどきすること)や体重減少などが起こる)を起こし、中止で改善した症例が複数報告されています。甲状腺ホルモン薬を使っている人は、自己判断で併用せず、使う場合は処方医・薬剤師に伝え、甲状腺の血液検査の値の変化に注意してください。自己判断で甲状腺ホルモン薬を中止・変更しないでください。服用時間をずらすことで対処できる飲み合わせではありません。なお、甲状腺中毒症の症例では、用量が論文に書かれていないものもあります(詳しい条件は下の「研究の条件」の欄にまとめました)。
ヒトでのエビデンス
あり(甲状腺機能低下気味の人での無作為化比較試験でT3・T4上昇とTSH低下。甲状腺中毒症の症例報告が複数)
根拠
Sharma AK, Basu I, Singh S. J Altern Complement Med. 2018;24(3):243-248. PMID: 28829155(潜在性甲状腺機能低下症50人、根エキス600mg/日・8週間、T3・T4・TSHがプラセボに比べ有意に改善)。Kamal HI et al. Cureus. 2022;14(3):e23494. PMID: 35475098(73歳女性、甲状腺機能低下症の自己治療として根エキスを約2年使用後に上室性頻拍を伴う甲状腺中毒症、中止で改善)。Hayashi M et al. Cureus. 2024;16(3):e55352. PMID: 38559552(47歳日本人男性、使用開始2か月後に無痛性甲状腺炎による甲状腺中毒症、中止で改善)。van der Hooft CS et al. Ned Tijdschr Geneeskd. 2005;149(47):2637-2638. PMID: 16355578(32歳女性、増量後に甲状腺中毒症、中止で正常化)。Gannon JM et al. J Ayurveda Integr Med. 2014;5(4):241-245. PMID: 25624699(双極性障害患者の試験でアシュワガンダ群にT4上昇方向の変化)。用量の補足: Gannon JM et al. J Ayurveda Integr Med. 2014;5(4):241-245. PMID: 25624699の用量条件は、Sensoril規格エキス250mg/日を1週間、その後250mgを1日2回(500mg/日)を7週間(Phytother Res誌の総説の表で確認)。Kamal et al. 2022(PMID: 35475098)とHayashi et al. 2024(PMID: 38559552)の全文を確認したが、どちらの論文にも1日量のmg数は記載されていない。van der Hooft et al. 2005(PMID: 16355578)の抄録にもmg数はなく、250mg/日から500mg/日への増量という内訳は後の総説の表による整理である。
- 最終確認日
- 2026-11-01
研究の条件
甲状腺ホルモンの変化が示された試験は、根エキス600mg/日を8週間続けた条件(Sharma et al. 2018、潜在性甲状腺機能低下症50人)。使われた根エキスは、後の総説の表ではIxoreal Biomed製と整理されています。IxorealはKSM-66(根のみのエキス、ウィタノリド5%規格)の製造元ですが、Sharma原著の抄録には製品名と規格%は明記されていないため、『KSM-66そのものの試験』と断定はできません。別のヒトデータとして、双極性障害の人を対象にした試験では、根+葉エキスのSensorilを250mg/日で1週間、その後500mg/日(250mgを1日2回)で7週間使った条件で、一部の人にT4上昇方向の変化が見られました(Gannon et al. 2014)。甲状腺中毒症の症例報告では、用量が論文に記載されていない症例があります。Kamal et al. 2022(73歳女性)は約2年の使用という期間のみで、1日量は論文に記載なし。Hayashi et al. 2024(47歳男性)は製品の表示どおりに使ったとだけ書かれ、1日量は論文に記載なし、使用期間は約2か月。van der Hooft et al. 2005(32歳女性)は、最初の数週間は時々の使用だったものが増量後に発症したと抄録にあり、mg数は抄録に載っていません(後の総説の表では、最初の1週間250mg/日、その後500mg/日へ増量し通算約6週間と整理されています)。
ふだんの量では
試験の600mg/日は、市販の根エキス製品の1日量と重なる範囲の製品もあります。ただしウィタノリド含量(試験でよく使われるKSM-66という規格品では5%)の表示がない製品では、試験品と同等かどうかは分かりません。市販品の形は規格で分かれます。KSM-66規格の製品は300mgを1日1~2回(300~600mg/日)とする製品が多く、Sensoril規格(根+葉・ウィタノリド配糖体10%)の製品は125~250mg/日級が中心です。同じ『アシュワガンダ』でも、根のみか根+葉か、ウィタノリドの割合が違うため、mg数だけでは試験品と比べられません。