セマグルチド(注射剤) × 使用中止後の体重再増加(リバウンド) 注意(ヒトデータあり)
要約
この薬をやめると、減った体重が戻りやすいことが、やめた人と続けた人を比べた試験で確かめられています。大きな試験(STEP 1)では、68週間使って体重が平均17.3%減りました。たとえば体重100kgの人なら、約17kg減った計算です。そのあと薬をやめて1年たつと、平均で11.6%分(100kgの人なら約12kg)戻り、残ったのは5.6%分(約6kg)でした。言いかえると、せっかく減らした分の約3分の2が、1年で戻ってしまったことになります。体重と一緒に良くなっていた血圧やコレステロールなどの検査値も、多くは元のほうへ戻る方向でした。もう一つの試験(STEP 4)では、20週間使って平均10.6%減った人を、そのまま続ける群と、偽薬(成分の入っていない注射)に切り替える群に分けました。48週間後、続けた群はさらに7.9%減り、切り替えた群は6.9%増えて、両グループの差は14.8ポイントに開きました。肥満や糖尿病は長く付き合う病気で、薬をやめれば食欲と体重は戻る方向に動きます。日本で糖尿病の治療に使う量(最大1.0mg)は試験で使われた量(2.4mg)より少ないため、減る量も戻る量もこの数字よりは小さくなると考えられますが、戻りやすいという方向は同じです。戻りにくくする工夫として、治療中からタンパク質(筋肉のもとになる栄養)をしっかりとって、筋肉に負荷をかける運動で筋肉を守っておくこと(この薬の「プロテイン(タンパク質サプリメント)」の記録に詳しく書いています)、薬をやめた後も食事・運動の習慣を続けることが挙げられます。ただ、こうした工夫をしても、完全に戻らない方法はありません。やめることを考えるときは、自己判断で決めず、やめた後の体重や血糖の見ていき方も含めて、処方医と計画を立ててください。
ヒトでのエビデンス
あり(無作為化中止試験と中止後の延長観察)
根拠
Wilding JPH, et al. Diabetes Obes Metab. 2022;24(8):1553-1564(PMID: 35441470、DOI: 10.1111/dom.14725)STEP 1試験の延長観察: 糖尿病のない肥満・過体重の成人327人が、セマグルチド2.4mg週1回皮下投与(または偽薬)を68週間受け、生活習慣への介入も含め全ての治療を中止した後、1年間観察された。0週→68週の平均体重変化はセマグルチド群−17.3%(SD 9.3%)、偽薬群−2.0%(同6.1%)。中止後の120週までにセマグルチド群は11.6ポイント(同7.7)戻し、0週→120週の通算変化は−5.6%(同8.9%)となり、著者らは減量分の約3分の2が戻ったと結論した。心血管代謝リスク因子の改善も、120週では多くが開始前の水準の方向へ戻った。Rubino D, et al. JAMA. 2021;325(14):1414-1425(PMID: 33755728、DOI: 10.1001/jama.2021.3224)STEP 4試験: 20週間の導入期(セマグルチド2.4mgまで増量)で平均10.6%減量した803人(平均年齢46歳、女性79%、平均体重107.2kg)を、継続群535人と偽薬切替群268人に無作為に割り付け、生活習慣への介入は両群とも続けて48週間観察。20週→68週の体重変化は継続群−7.9%、切替群+6.9%(群間差−14.8ポイント、95%信頼区間−16.0〜−13.5)。いずれも肥満症を対象とした2.4mgの試験であり、日本で2型糖尿病に使うオゼンピック(最大1.0mg)の中止後を直接調べた試験ではない
- 最終確認日
- 2026-11-01
- 確認方法
- AIによる検証のうえ薬剤師が一括承認
研究の条件
対象は糖尿病のない肥満・過体重の成人。用量はセマグルチド2.4mg週1回で、日本では肥満症用のウゴービと同じ用量にあたる。2型糖尿病用のオゼンピックの国内最大量(1.0mg)より多い条件の数字である点に注意。条件の違いとして、STEP 1の延長観察では生活習慣への介入(食事・運動の支援)も薬と一緒に中止されたのに対し、STEP 4では生活習慣への介入は両群とも続けられた。
ふだんの量では
STEP 4のように生活習慣の支援が続いていた条件でも、薬をやめた群では平均で体重が戻りました。「戻りにくい工夫」は戻る確率を下げる方向の話で、戻らない保証ではありません。日本の糖尿病の用量では減量幅自体が小さいことが多く、戻る量もこの数字より小さくなると考えられます。