イノシトール × リチウム 大きな影響なし(ヒトデータあり)
要約
リチウム(気分を安定させる薬)は、脳のイノシトールを減らすことで働くという仮説(イノシトール枯渇仮説)があり、「イノシトールを補うとリチウムの効き目が弱まるのではないか」という心配がされてきました。実際に調べた小規模なヒト試験では、双極性障害のうつ状態の人24人に、リチウム等の気分安定薬を続けたままイノシトール12g/日を6週間追加したところ、気分安定薬の血中濃度(血液中の薬の濃さ)は変わらず、大きな副作用もなく、躁状態(気分が異常に高ぶる状態)への切り替わりも報告されませんでした。レビューでも、1日6gまでの補充は末梢(体の各組織)の副作用を和らげる可能性があり、中枢(脳)でのリチウムの働きを妨げないと整理されています。ただし試験は人数が少なく期間も短いため、「影響がないことが証明された」とまでは言えません。リチウムを使っている人が使う場合は、主治医に伝え、自己判断でリチウムを中止・変更しないでください。服用時間をずらすことで対処できる飲み合わせではありません。
ヒトでのエビデンス
あり(リチウム等を継続したままイノシトールを追加した小規模な無作為化試験で、薬の血中濃度に変化なし)
根拠
Chengappa KNR et al. Bipolar Disord. 2000;2(1):47-55. PMID: 11254020(双極性うつ24人、イノシトール12g/日を6週間追加。気分安定薬の血中濃度は不変、忍容性は良好)。Janiri L, D'Ambrosio F, Di Lorenzo C. Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2021;25(17):5483-5489. PMID: 34533796(リチウムとバルプロ酸によるイノシトール低下と副作用の関係のレビュー。ミオイノシトールとD-キロ-イノシトールの80対1配合、補充量は通常4g/日、最大6g/日までで中枢での治療効果を妨げずに副作用を減らしうると整理)。Levine J. Eur Neuropsychopharmacol. 1997;7(2):147-155. PMID: 9169302(精神科領域でのイノシトール12〜18g/日の対照試験のまとめ)。
- 最終確認日
- 2026-11-03
- 確認方法
- AIによる検証のうえ薬剤師が一括承認
研究の条件
研究の条件: イノシトール12g/日を6週間追加した条件(Chengappa et al. 2000)。精神科領域の試験用量は12〜18g/日と大きい。
ふだんの量では
ふだんの量では: サプリメントの一般量(多嚢胞性卵巣症候群向けなどで2〜4g/日)は、試験用量12g/日より少ない。レビューで副作用対策として示された補充量は4g/日程度である。