メサドン塩酸塩 × グレープフルーツ類 注意(ヒトデータあり)
要約
グレープフルーツジュースを飲むと、メサドンの血中濃度が上がることがヒトの試験で確かめられています。メサドン維持治療中の患者8人にグレープフルーツジュース200mLを1日2回(飲む30分前と同時)、5日間飲んでもらった試験では、血中濃度の指標であるAUC(体の中にどれだけの量の薬がどれだけ長くとどまったかを示す値)が平均で約17%増えました。平均では小さな増加で、この試験では効きすぎの症状は出ませんでしたが、増え方には個人差があります。別の症例報告では、メサドン1日90mgを服用中にグレープフルーツジュース約500mLを3日間飲んだ51歳の男性が、呼吸が浅くなるなどのオピオイド中毒の症状で意識を失って見つかりました。濃度が上がれば、強い眠気や呼吸の抑制(呼吸が浅く遅くなること)が強まるおそれがあります。なお、メサドンの分解には複数の酵素が関わり、近年の知見ではCYP3A4ではなくCYP2B6が主な決定因子とされていますが、グレープフルーツで濃度が上がること自体はヒトで確かめられています。服用中はグレープフルーツ類(ジュースを含む)を日常的に摂ることは避け、摂る習慣がある場合は処方医・薬剤師に伝えてください。自己判断で中止・変更せず、気になったら処方医・薬剤師に相談を。処方には、添付文書には書かれていない、その人の状態に合わせた理由があることも多いです。
ヒトでのエビデンス
ヒトでの薬物動態試験(メサドン維持患者8人)および症例報告。
根拠
Benmebarek M, et al. Clin Pharmacol Ther 2004;76:55-63(メサドン維持患者8人、グレープフルーツジュース200mLを投与30分前と同時の1日2回・5日間、R体・S体ともAUC(24時間)が平均約17%増加、最高濃度も増加し見かけのクリアランスは低下、過量投与の症状は認められず。著者らは平均的には小さな増加で危険とは予想されないとしつつ、個人によってははるかに強い影響が出る可能性を否定できないとして、維持治療中の摂取は推奨されないと結論)。症例報告: Ershad M, et al. J Addict Med 2020(メサドン90mg/日維持中の51歳男性、グレープフルーツジュース約500mL/日を3日間飲んだ後に意識消失・低酸素・呼吸抑制・縮瞳で発見され、ナロキソンで改善)。代謝については、Kharasch EDらのヒト試験・総説によりCYP2B6が臨床的な消失の主要決定因子とされ、『主にCYP3A4』という従来の前提は修正されている。ヒト試験と症例報告が存在するため、現行バッジ『ヒトでの直接データなし・機序からの注意』と『ヒトで実際に確かめたデータは確認できていません』という記述は維持できない。電子添文でのグレープフルーツ類の名指しの有無は未確認(添文原文に到達できていない)ため、バッジは論文ベースの『注意(ヒトデータあり)』とする。
- 最終確認日
- 2026-11-02
- 確認方法
- AIによる検証のうえ薬剤師が一括承認
研究の条件
グレープフルーツジュース200mLを1日2回・5日間(薬物動態試験)、約500mL/日・3日間(症例報告)
ふだんの量では
通常の範囲